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大阪市福祉教育語りの会 鈴木昭二 (13)
                                

                                   2010年3月20日
工夫と勇気
                         
                     
 昭和50年1月、日本ライトハウスで、歩行訓練・点字学習・日常生活の身辺処理などリハビリを1年間受けた。失明から1年後のことだった。そこではいろいろな原因で失明した方、生活環境の異なる方などに出会った。私と同い年で、工場のコンプレッサーが爆発したために、失明し、右腕が完全マヒになったN君。中途で失明した全聾のAさん。この二人から私は生きる《工夫と勇気》を教えてもらった。

 ある日先輩のN君と親しくなった私は、N君に寮から一番近い銭湯へ連れて行ってもらった。右腕はマヒのため三角巾を首からつるしているが、器用に服を脱いだ。マヒした腕を三角巾でつるされた肩につかまり湯ぶねについて行く。かけ湯をし、湯船につかる。さて、これからどのようにして体を洗い石鹸のついたタオルをどのようにして絞るか考えていた。そんな私をしりめにさっさと石鹸のついたタオルを洗い流し、タオルを絞り終えた。不思議に想った私は「片手でどうしてタオルを絞ったの?」と訪ねてみた。彼は事もなげに「蛇口にタオルを巻きつければ、片手でも絞れるよ」と答えた。それまで目が見えないことは、何にも出来ないこと。まして片腕が動かないことはそれ以上のことであり、自分では想像できなかったことである。N君は大きな「気づき」を与えてくれた。全く光のない人の一人歩きなどできないことと思い込んでいたが、歩行訓練をはじめとして、多くの「工夫」や訓練により「できること」が意外に多いんだなと感じた。

 全盲全聾のAさんからは歩く「勇気」を教えられた。
Aさんは18歳で聴力を失い、28歳で全盲となった。私と出会ったころは、ライトハウスの寮から一人で歩いて、パン屋さんへおやつを買いに行けるようになったという。一度だけAさんと話したことがあった。Aさんの手のひらに「こ・ん・に・ち・は・す・ず・き・で・す」とひらがなで書くと、一字一字を声に出しながら読み上げた。視覚聴覚を失ったAさんは触覚でコミニケーションをとっていた。

こんな私でも、ライトハウスに入所8ヶ月後には寮を出て、1時間半かけての通所ができるまでになっていた。ライトハウスでは視覚障害者でも「《生きていける》自信と《自分らしさ》を取り戻すことができた。


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